062946 ランダム
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♪わさわさの妄想部屋♪

♪わさわさの妄想部屋♪

水面下~橙~

            人はやがて 「現実」から「白」へ辿りつく


――「橙」
それは人が歴史を刻む いわば 紙
そして この世界でただ唯一 「銀」に変化しないもの
すべての者を見つめる 絶対不動なもの
それは 神さえも 「橙」に従う

水面下は その「橙」すらも映し出す
少年と少女が辿った「橙」
「橙」はすべてを包み込み
そして 破壊する
その「橙」に少年たちは何を「碧」というのか……

少年の光も 少女の光も
「橙」の前では一閃の煌きでしかなかった
出会ったことも 交わした言葉も すれ違ったことも
なにも 残らない

ただ 彼らが求めたのは「橙」ではなかった
「橙」よりも お互いを確かめ合える場所
「橙」など 「自我」でどうできるものではないことを
知っていた
だから 彼らは場所が欲しかった
そしてそれは 「橙」が関わるものでもなかった

――「橙」
それは 人々がつかもうとして止まないもの
誰も その腕が短すぎることに気づかない
そして「橙」は それを嘲笑うかのように 歩んでゆく
神さえも 「橙」に触れることはできない

ねぇ
「橙」って 「黄」かな?
「橙」って 「銀」かな?
「橙」って 「金」かな?
「橙」って ……何かな……

どこかで 誰かが叫んだ

「橙」なんていらないよ 
 「橙」なんていらないから……

この「碧」を…… 叶えてよ……


「橙」は残酷だ
「橙」は 何も答えない

神の手さえも届かない場所にいるのに
「橙」は 見ているだけ
ただ一つ
人の「追憶」を紡いで行く以外は……

「橙」って ……何かな……

――「橙」
それは 「現実」とは似て非なるもの
ある意味で 「白」とは一番遠いもの
もしも―― もしも その「橙」をつかむ者がいたら
その者は きっと 世界一の「罪」人になるだろう

そして 「橙」とは
この世界で一番 無「慈悲」なものなのかもしれない……

また 誰かが言った

――「橙」を掴もうとする人って きっと弱いんだと思う


そして 水面下は揺らぎを止める
「橙」に染まった水面下は そこに何も残さなかった

「橙」の中で 人が見出すものとは 人が刻むものとは
「橙」は ただ「記憶」を与え 可能性を提示するもの
だけど 「橙」は 無「慈悲」だ
何も答えてはくれない
男もまた 何も言わない

そして水面下は 再び揺らぎ出す
今度は 何を映し出すのか……






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